炎の馬―アイヌ民話集 (アイヌ民族シリーズ)

読んでいてほっとする。和人ではなくアイヌの話だから、日本人の精神と言い切っていいのか微妙なところだが古き良き日本はこういう感覚が残っていたのではないか、と思う。獲物を獲る、ということも、殺すというのではなく、神様が人の国へ降りてきていて、どうかうちへ来て下さい、と火の神や矢の神と呼びに行き、来てくれたことに感謝して土産を持たせて魂を神の国へ送り返す。この感覚が素敵だなと思う。あとがきや付録にも書いてあったけれど、木の枝一本切るにも同じなのだ。昔話は得てして残酷なものだけれど、アイヌのお話は残酷ではないし、たとえ死んでしまったりしてもきちんと理由があったり、神の国へ帰ったり、無暗に残酷な話というのが無い。読んでいて嫌な気持ちにならないし、学ぶことが多い。