日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか (講談社+α文庫)

日本はアメリカのいいなり—。そんなことは知ってるよ、と思いながらも読んでみて、目から鱗が落ちるような感覚の連続だった。この本では、日本の憲法９条２項（戦力と交戦権の放棄）は沖縄の軍事基地化とセットで、世界じゅうが軍備をやめてみんな平和になりましょうという話ではない（パート１）、第２次大戦で昭和天皇は、戦争責任の追及を恐れ、責任逃れと天皇制維持を引き換えに白旗を揚げ、沖縄をアメリカに差し出した（パート５）ことなどが書かれてある。公開されたアメリカ公文書などが根拠として示されていて、説得力がある。個々の根拠は、大学教授や政党関係者、ジャーナリストなどによって既に明らかにされているとのことで、著者による特ダネではない。パズルのピースを一つずつ埋めていき、全体の絵柄を示したところに、この本の価値がある。複雑な社会の裏の仕組みと歴史が簡略化して説明してあるため、私のような浅学非才にも、すんなり頭に入ってきた。分かりやすい表現が使われているため、片言隻句を捉えて過小評価する向きもあろう。「陰謀論」との反論があれば、著作として読んでみたい。社会と歴史を複眼的に見る目を養いたいと思う。それには当然ながら、根拠が示されないと反論の意味をなさない。この本のタイトルには「原発」も入っているが、考察が薄いようにも感じた。新聞、テレビが伝えない原発政策の闇にも光を当てて、世に問うてほしい。